ヒモ夫の日常

駄文、愚文

【感想・解説】京アニにしか作れなかったアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」(TV・外伝・劇場版)について

9月18日公開「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン

f:id:ofsp0604-oto363:20200919192000j:plain

あじがどう・・・京アニ・・・(泣いている感じ)

 こんにちは。実はこの作品についてのブログを書こうと思ったことが今日含めて3回ありました。TVシリーズNetflixで見たとき、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝」を映画館で800回見たとき(ちょっと盛っている)、そして今回「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を見たときです。

 ですが、まー書けなかった。むずいんですよね。私はかなり京都アニメーションや、その作品に思い入れがある人間なので、何時間、何文字あっても足りないし、「俺はここまで細かく見ているんだ!」みたいなマウンティング要素がどうしても出てしまって、相応しくないと思って下書き止まりだったんですよ。好きが故にね!

過去2回の下書きを見て自分の文章とエゴの気持ち悪さに吐き気がしましたが、ヴァイオレットのおかげでかつて無いほど穏やかで慈悲深い気持ちになっているので、過去のドブチンカスクソオ◯ニー野郎である私を許したいと思います。

 

ofsp0604-oto363.hatenablog.com

 けいおんが好きすぎて書いたキモいのも読んでね。

本題

今日はそんな優しい気持ちにしてくれる「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」について極力短く、純度高めで書きます。まずは見てない人に見てほしいので重くならないように。なぜこんな面白いのか、京アニやアニメ界や私達にとってどんなアニメか、簡潔に慈悲深く書いていきますよ。

 というか今日映画館人多すぎてびっくりしました。どうか皆さんで見まくって、宮崎駿が打ち立てた日本最高記録を超えて、ヴァイオレットの粗探しを宮崎駿にさせましょう。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン」とは


5分で分かるアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第1回

公式がこんなに役に立つ動画を出しているので、第一回だけでも見てください。だいたいこれで内容がつかめるはず!!

思いを綴る、愛を知るために。

感情を持たない一人の少女がいた。

彼女の名は、ヴァイオレット・エヴァーガーデン

戦火の中で、大切な人から告げられた言葉の意味を探している。

 

戦争が終わり、彼女が出会った仕事は誰かの思いを言葉にして届けること。

 

ーー戦争で生き延びた、たった一人の兄弟への手紙。

ーー都会で働き始めた娘から故郷の両親への手紙

ーー飾らないありのままの恋心を綴った手紙

ーー去りゆく者から残される者への最後の手紙

 

手紙に込められたいくつもの思いは、ヴァイオレットの心に愛を刻んでいく。

これは、感情を持たない一人の少女が愛を知るまでの物語。

Introduction | 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式サイト

 ってな感じです。一人の兵士として育てられた孤児の少女が、自分を大切にしてくれる人間と出会います。その人の最後の言葉の意味を探すため手紙の代筆の仕事を始める。その中で様々な感情を見つけていく。

という話ですね。めちゃくちゃありがちでしょ?基本私のブログの読者想定ってサイテーでニヒリスティックなやつばかり想像しています。このあらすじを見ても、「けっ、よくある話じゃねーか!ニヒヒ」とか言いそうな感じの。まあ私がそういう人間だから、と言われればぐうの音も出ないわけですが。

 このありがちというか「ストレートさ」が根本にあるからこそ、多くの人を魅了してやまない作品になってるんですよ。だからニヒリスティックなお前たちを今から説き伏せるのでこの続きも読んでくれよな。

愛の「結晶」なアニメなのだ!

 一言でいうとこうです。気恥ずかしいですが、まじでそうなんですよね。この物語のテーマは確実に「愛」ですが、他のどんな映画や小説よりも明らかに純度が違うんですよね。

日本人はそういう創作好きでしょ?ドラマから映画まで愛をテーマにした作品は溢れていますが、そのどれよりもストレートで混ぜものなしなんですよね。

この混ぜものっていうのは作ってる側の「欲」です。絶対どっかに、欲がはいるじゃないですか。人気イケメン俳優を起用してみたり、名曲を映画にしてみたりね!ヴァイオレットを見た後でなければもっとボロカス言ってますが。

そういう欲が少しでも出てしまうと、どんなに「愛」の割合が高くとも説教臭くなったり、ニヒリスティックなやつを生み出してしまうんですよ。それがないのがこの作品なんです。純粋に良いものを創って、みんなに見てほしい!今私達ができることはこれだ!!!っていう京都アニメーション等制作の人たちの思いが詰まっていて、それだけでただのお涙頂戴の作品ではないなって思います。だから結晶なんです。

これは京都アニメーションでしかできません。後半で舞台挨拶での監督のインタビューを少し紹介しますが、今の彼らに必要のないものを削ぎ落として創った結晶なので、こんなにおもしろいんです。

創られ方の”魅力”

それだけでは、ニヒヒな人たちが感情論だ!とか言ってくるので、魅力を解説します。

捻りがあること

ストレートで王道な設定であるために、どうしても既視感が湧いてくると思います。(表現力も高いのでどんな真っ直ぐなシナリオでも通用するのが京アニですが)がしっかり外すところは外しているんですよね。

 王族同士の結婚をテーマにした回があって、いわば政略結婚ものなんですよ。国民に政略結婚がさとられないように「公開恋文」を書いてラブラブぶりをアピールするというストーリーです。これも「決められた結婚の偽物の愛より本物の愛を選ぶわ!」みたいな展開かと思わせて、違うんです。

まじで運命的に好きだけど、みんなに公開する手紙では書けないような、本当の気持ちを読み取れなくて不安で居る二人を、ヴァイオレットが繋ぐ話になっています。予想と少し違うストーリー展開をすることが多いです。

キャラの設定もそうで。自分の死を覚悟した母親が、幼い娘に伝えたいことを手紙にして死んだ後もメッセージを残す。的な話があるんですよ。これまた王道だし、よくあるんですが、その幼い娘の設定がまた非常に素晴らしい。「何も知らない純粋な子供」を演じた強くて優しい女の子なんですよね。だからこそもっと切ないし悲しい深い話になるんですよ。

 私は虚と実のバランスが丁度いい作品が名作だと思っているので、この作品はぴったりです。あまりにファンタジックな創作の世界の中に、現実的な展開や設定が見事に刷り込まれていて、どんどん没入していきます。たんなるお涙頂戴ではない、残酷でもあり美しい創り方がされています。

説教臭くならない3つの視点

家族の大切さや、恋人等への愛を語る作品ってどうしても「説教臭く」感じてしまいます。よく言えばメッセージ性です。それを全面に出しすぎるがあまりニヒヒな私はどんどん引いてしまうし、先程書いた「欲」も見えてくるんですよ。

 創る人達の欲のない「結晶アニメ」だから、それが伝わらないことが一番ではありますが、この作品の基本的な構造にも工夫があります。それが”3つの視点”です。

エピソードによって、家族愛だったり兄弟愛、友人との愛、親子愛などいろんな「愛」の種類が出てきて、ヴァイオレットがそれを学んでいく、それを通して私達にも伝える、という仕組みなんですけど面白いのは、キャラクターがその愛を知らないことです。3つの視点というか構造でできているんです。

・依頼者

・ヴァイオレット

・私達(見ている人)

っていう3つがあってそのどれもが、伝えたい愛の形を理解していないんです。

ヴァイオレットは依頼者との関わりの中で、いろんな愛の形を知る

依頼者は真っ直ぐに寄り添ってくれるヴァイオレットのおかげで愛の形を思い出す

そんなシーンを客観的に見た私達の心中に勝手にいろんな愛の形が再構築されていく

どのエピソードも基本的にはこの構造で形作られています。教わるのではなくて、キャラクターたちとともに、自分の中で、当たり前になった感情を再構築できる流れになっている。だから押し付けがましい感じがなく、ただ美しくてステキなお話に感じるんですね。制作の方たちの意図との相乗効果もあって素晴らしいアニメになっているわけです。

 他に、絵も演技も素晴らしいです。この一言。

「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」についての疑問と答え

そしてやっとここにたどり着きました。長くて申し訳ないです。これでも全力でまとめているつもりです。

 映画はとても面白く、結晶アニメでしたが気になった点が2つだけあったんです。この自粛中に映画たくさん見たので、また穿った見方をしてしまっているな、なんて思っていましたが、舞台挨拶の監督のインタビューを見て、全てに納得がいきましたね。やっぱ創り手の直の思いを聞くのは面白いです。

 ネタバレは全くしていませんが、少し私の主観が入るので、まっさらな気持ちで楽しみたい人は是非、劇場版を見てからまた読んでやってください。

ラストあたりの、船での出来事

いきなりヴァイオレットが「カリオストロの城」のような事をしたので驚きました。そこでハッと自分が映画館に居ることを自覚してしまったんですよね。「ああ、これはアニメだった」って思ってしまった。つまりちょっと冷めてしまったんですよ。他にも物語の構成上仕方がないところもありましたが、このシーンが少し残念だったんです。

でも監督がインタビューで「制作にあたって気にしていたところは?」という質問に

(私達制作は)ヴァイオレットを真っ白な人と言ってました。真っすぐでまっさらな彼女を表現するために、奇をてらった演出などをしたくなかった。

舞台挨拶より 

 と発言しており、なるほどなと思いましたね。だったらあのシーンはベストだと思いました。納得です。なのでもう一回見に言って存分に泣きたいと思います。

アニメに登場したキャラの再登場について

冒頭からアニメで大人気で屈指の神回と言われているキャラクターが登場します。

 もちろんそのキャラを見て、開始2秒で泣きましたが、「なぜそんな安易なことを?」と思いました。映画で最初のつかみというのはとてもとても大事です。だからといってなんか取ってつけたような印象を持ったんです。

アニメに登場したあるキャラクターの孫が登場し、ヴァイオレットの手紙を発見。その孫が昔流行っていたという「自動手記人形」の仕事とヴァイオレット・エヴァーガーデンについて調べていく、といった冒頭シーン。

これはあくまで予想なんですが、この設定もしかしたら後付なのかもしれません。そのキャラ関連のシーンがなくとも映画としては成り立っていると思います。原作を読んでないので大きな声では言えませんがね!!

だからそのときは、まあ好きなキャラ見れたし良いか、と割り切ったんですがまた監督のインタビューが素晴らしかった。

「一番見てほしい、シーンは?」という質問に

ラストでデイジー(冒頭の孫の女の子)が母親と父親に手紙を書くシーンです。 あそこを見せるために創ってきたので、あそこを見てほしいです。

ーーー「最後になにかありますか?(的な質問)」

映画を見てくださった方々にも、少なからず大切な人がいると思います。その方々に、なにか伝えたい、と思ってくれたら嬉しいです

 的なことを言ってました。うろ覚えですいません。これでまた納得というか涙が止まんなかったです。もし後付にしたのであればそれも納得です。初めはその女の子キャラの役割が、観客を映画の中にいれるためだろうなあって思ってたんですよ。ヴァイオレットたちの物語を客観視するキャラクターだったので、見ている人のメタファーだろうなとは思っていましたが、そこを一番に思って創っていたって発言を聞いてすごいグッと来ましたね。

舞台挨拶の話

もうすぐ終わるので我慢してください。

とてもいい舞台挨拶でした。

キャストもスタッフも監督もいろんな事があったので、いろんな事を思いながら創ってきたんですよね。

監督は開幕涙ぐみながら、さりげなく語ってくれました。私達のような無関係なアニオタでも悲しいことだったのに、また私達を元気づけような作品を創ってくれて、どこまで俺らに真摯なんだこのアニメ会社、と思いました。ライブ・ビューイングで見ていたファンたちも声を上げて泣いていましたね。腕を噛んで我慢しましたよ。俺は。

「いま自分たちができることをしました」

と監督が言っているのを聞いて、これは愛の結晶の作品だと心から思いましたよ。

 

終わりに

これが限界まで濃縮したブログです。本気出せば、カラオケの歌本くらい書けますからね。

ほんとうにありがとうございました、としか思えません。こんな純度100%な作品を創ってくれてありがとうですよ。一アニメファンとしてヴァイオレットの最後を見届けることができて本当に良かったです。令和アニメも捨てたもんじゃありません。これからもずっと大好きなアニメです。

 上映終了後、トイレでヴァイオレットがしているブローチを付けた白髪のサラリーマンを見て、泣き笑いしました。そんな誰でも楽しめる「結晶アニメ」です。皆さん見てください。