【妄想・レビュー】『映像研には手を出すな!』第6集を読みました。好きなものと描きたいもののギャップが面白い
【妄想・レビュー】『映像研には手を出すな!』第6集を読みました。好きなものと描きたいもののギャップが面白い!
※筆者の妄想が多く含まれています。誰も読みはしないだろうけどお気をつけください。
今回も素敵な表紙です。
ネットフリックスで配信が開始されてからまた人気が再燃した『映像研』の最新刊が発売されました。個人的にはずっと燃えている作品ではありますが、前回の第5集から少し間が空いたこともあり、5を一度読み返してから6を読み、改めて感じたことなどのメモ。
ストーリーや新キャラなど
ストーリーはこれまでと変わらず、その時時の環境とこれまでの積み重ねによってアニメのテーマを掴み創作していくといった感じ。
映像研のメンバーも自信がつきはじめ、さらに作りたいものに邁進していきます。6集では声に個性を持ちながら脚本家としての力も発揮してくれそうなキャラクターも登場してこれからの作品作りがより楽しみになりましたね。
映像研のお楽しみポイントである、部員たちのイメージを共有していく作業に初めて違和感を持つ人物、が仲間?になりました。
私は家でずっと妄想をして暇をつぶした子供だったのですごくお楽しみのシーンですが、『映像研』の視聴者の中にはあのシーンによって作品のリアリティ判断に支障をきたしてしまってハマらない方もいるかと思います。そういう声もちらほらインターネットで見られました。
いわゆる普通な人ポジションなのが新キャラクターかと思ったのですが、彼女は書くことが得意なようですね。彼女もクリエイティブな才能を持つ人物なので普通な人ポジションではなく「客観性」に長けたキャラ造形になっていくのかなと思います。イメージ共有のノリについていけないというよりは、性質として俯瞰してしまうタイプみたいな。
小説家さんにも浅草のようなどっぷり没入するタイプの書き手もいるかとは思いますが、色々観察して、淡々と客観的に描写していくタイプもいらっしゃいます。きっと桜田は後者のようなタイプのクリエイターなのかもしれないですね!
好きなものと描きたいもののギャップ
作者の大童先生はどこかでこういう作品や自分自身についてのゴタクは好きじゃないとおっしゃっていたような気がしますが、作品に意図がなくても、伝えたいことがなくとも勝手に考えて楽しむ連中です。
自分の想像や思考を抱えているだけじゃ邪魔だって浅草も言っていたのでメモとして書き起こしておきます。
作者の大童先生は私なんかじゃ比べ物にならないほどたくさん見ているし、好きなものも多い。それが存分に出ているのがこの『映像研』なんですが、いわゆる冒険活劇が好きなのだろうなと作品を読めば妄想できます。
なのにそれをやっていないところが面白いと感じます。普通好きなら真似したいし、やりますよね。たくさんの漫画家がたくさんの漫画家に憧れて同じ道を歩んできていて、大童先生もやろうと思えばすごい冒険ものかけると思いますしそれでも売れるはずです。
でもやらない。実際には作品の中で浅草達がたーっぷりやっているんですが、冒険活劇を描くのではなく冒険活劇を作る話を描いているわけです。
それは好きなものと描きたいもの、もしくは描けるものが違うからなのかもしれないですね。もちろん好きなんだけど、それよりも創ってる側の話のほうが興味あるしかきてーんだ!みたいな。
すごく当たり前の話なんですけどこの乖離具合がすごく魅力的ですよね。それだけ好きならそういう世界を描いてください!読みたいです!って思うんだけど、それを置いといて描きたい事がまたあるんだなと。
そのバランスだったり、理解のできない神秘ゾーンみたいなのにそそられます。ただの妄想ですが。
構造がやっぱり面白い
今回も浅草や水崎の作り手としての姿勢が描かれていてとてもかっこよかったですね。ものを作る人達にはすごくささると思うし、同じような漫画やアニメを志す方たちは焦りさえ感じてしまうかもしれないです。
6集では、作品の細かさについて浅草が熱く語っていました。
派手なものはみんな好きだし目が行く、だからこそディティールに拘ろうというようなセリフでした。
序盤に語られた水崎が妥協できない理由にも通じますし、彼女もエンタメが派手で埋め尽くされていくのを止める!と発言しています。
これは私もすごくわかります。そういうのをもっと見たい。良い例として『シン・エヴァンゲリオン』を取り上げるとド派手な戦闘シーンの中に光る、すごく地味だけどかっこいいアングル(何度も言いますがエッフェル塔にゴープロつけたアングルが好きです)であったり、ヴンダー内の移動手段であるモノレールのような乗り物がどこを走っていても船員が平衡感覚を失わないような仕組みを一瞬描いていたり、そういういちいちやってますみたいなとこがグッと来る。フィクションが本当になる瞬間がそういう細かいシーンだったりするんですよね。
ですごくかっこいい2人の創作論なんですけど、これって描いている人が徹底してそう思っていて実践できていないとかけないセリフですよね(笑)
何人の漫画家やアニメーターが自分の作品で、「地味なディティールで圧倒する!」なんてセリフを吐かせられるんだろうな~と思うとワクワクしてしまいました。
彼女らのセリフに心打たれながらも、この『映像研』という作品でそのセリフを実行していて、熱心に読んでいれば読んでいるほど作中のキャラクターの説得力も、共感性も上がっていくみたいな。
言ってることを即実行してます、それをリアルタイムで読みながら確認できます。みたいな構造がおもしろおかしくって美しいですよね。
第7集もすごく楽しみです。