【書籍紹介・解説】「死にがいを求めて生きているの」(著・朝井リョウ 中央公論新社)
みなさんこんにちは。いまアンジャッシュの渡部さんの謝罪会見をBGMにブログを書いています。意外と快適です。筆が進みます。
それと同時に、久しぶりの渡部さんを見ましたが、肩幅狭くありませんか?
ひな壇に座っていたり、MCをしている時はすごく自信に溢れて大柄に見えましたが、今日はやたら小さく見えますね。
肩身が狭い思いをすると、物理的にも肩が狭くなるんですね。
会見中はずっと「身勝手でした・・・」「自分勝手な・・・」とおっしゃっていてすっごく謙虚な方なんだなーと思いました!ファンになりそうです!
「死にがいを求めて生きているの」著・朝井リョウ
くだらない茶番は置いておき、今日は本の紹介です。僕の好きな朝井リョウさんの作品、「死にがいを求めて生きているの」です。
2019年に発売された作品です。去年出たばっかりのときに、タイトル買いをしてました。この本結構分厚い本で、しっかりと積ん読の土台として役割を果たしていたんですが、小説ブームが今来てまして、ようやく手に取ったというわけです。
まあ、面白い。
これはすごい本ですよ。朝井リョウさんってやっぱすごいなーと思いました。私実は好きなんです。小さいときに「チア男子!」を初めて読んでから衝撃が走りましたね。(桐島部活やめるってよ、は読みましたが覚えていません。すいません)
とりあえずこの本の概要と、書きたいことを3点程書かせていただきます。
・概要
まず超重要事項なんですが、この本はあるプロジェクトの一つとして書かれてます。
「螺旋プロジェクト」というやつです。
まあ興味ある人は、こっからいってください。
簡単に説明すると、朝井リョウ氏含め、9人の作家さんが、「海族」と「山族」という2つの一族の対決をテーマにして、あるルールを守りながらそれぞれ作品を書きます。
その作品群を「螺旋プロジェクト」と呼び、独立した作品でありながら読むと超絶壮大なタペストリーみたいになっているというわけです。
原始時代から始まって戦国時代、朝井リョウさんが担当した平成、そして何百年後の未来まで、「対立」というテーマで作品を書いています。
名だたる作家陣の中、平成を任された、つまり現代を代表する作家だ!!お前しか居ない!!!と、会議室で堺雅人風のプロデューサーから、託されたのが朝井リョウ氏というわけです!すごい!!!
っていうのを理解しないまま読んでもすっごく面白かったです。実際僕がそうでした。
・粗筋
漢字で書くと、粗品っぽくていいですね。
構成としては、朝井リョウ氏が得意の、「複数の語り手」が登場し物語を展開していく方式です。
たくさんの登場人物が一つの話を語ることによって、「一人称語り」の弱点である情報量の少なさや飽きを補いつつ、良さであるサスペンス性を保持したまま語られています。
物語としては、幼馴染同士である二人の男の子が居ます。彼らはまったくもって正反対な性格で、普通なら絶対に交わらないような二人です。
そんな二人が、なぜ一緒にいるのか、それをいろんな人物の視点から、そして「生きがい」や「価値観」というテーマのもと描かれていく感じです。
そしてその後ろにはぐるぐると螺旋のように積み重なってきた、「対立」が横たわっているわけです。
自分で書いててとっても面白そうです。
実際面白い。朝井リョウさんの書く、繊細で張り詰めるような苦しさのある「若者」小説、でありながら歴史ロマンものの面もあり非常に楽しめる作品です。
すごいところ3!!!
・細かい表現
とにかく朝井リョウ氏の細かな文マニアな私。一気に情景を思い起こさせる文彩に惚れ惚れします。あと、「妄想力」もすごい。
今回お気に入りの表現を2つだけ紹介します。
まずは、序盤に看護師の女の人が登場するんです。彼女が病院から帰宅し、ブラジャーを外すシーン。
脱衣所に向かい、服を脱ぐ。暖房の行き届いていない脱衣所は寒いけれど、ブラジャーを外す開放感が嬉しい。
(「死にがいを求めて生きているの」 p15)より
前田は事も無げにそう言うと、氷が2つ入った水をごくごくと飲んだ。その姿を見ながら弓削は、若い時は冷たい水がやけにうまかったな、と思う。
(p340)
いや、あんたブラジャーを外す開放感を感じたことないやろ!
この2文だけで、女性が脱衣所でブラジャーを外す瞬間を、容易にリアルに想像できますよね。
下のシチュエーションは、中華屋かなんかで飯を食っている大学生をみた38くらいのおっさんのモノローグなんですけど、たしかに今飯屋で冷たい水飲むの、かなりうまいです。
それを懐かしむオヤジも、くってる大学生もまたまた簡単に想像できる。そして朝井リョウさん、あんたまだ20代やろ....
他にもキュンキュンするような、表現ばかりなので、みなさん各作品で朝井リョウ節を探してみてください。
私は、「ゴミ箱の蓋を締めた時」の表現がベスト・オブ朝井リョウ節です。(なんの作品か忘れた。)
・企画とテーマ(書きたいこと・求められてること)をマッチさせる力
これガチすごいと思いません?
この本すっごい壮大な話なんですよ。もちろん「螺旋プロジェクト」自体がそういうもんなのでね。
そういったみんなで共有すべき「設定」や「ルール」を物語の中心に添えつつ、
今刺さりそうな「生きがい」、「価値観」についてかなり攻めたことを書いてある。
つまりレイヤーの作り方と、偽装がかなりうまく書かれています。
今を生きる学生として読んだ私が凹むくらいに、耳が痛いことも書いてありますし、もしかするとこの本を破り捨ててしまうor無気力になってしまう若者もいるんじゃないかな。それくらいリアルです。朝井リョウさんの人を見るレベルがすごいなあといつも感心します。
かと思えば、壮大なテーマを感じて、螺旋プロジェクトを制覇したい!という気持ちもしっかり感じさせる。
天才です。朝井リョウ氏。
・構成力
それを感じさせる構成力がまたすごい。多数の一人称語りを使うこと、その登場人物たちの出てくる順番、全てが完璧です。
一つの物語で、「海族」「山族」に対してのオチ。自分で取り上げた現代の対立である「価値観」に関する答え。
伏線も取りこぼすことなく、どちらに対してもしっかりとしたゴールがあり、そこへ導く動線が完璧なのです。
かなりボリュームがありますが、この物理的な質量を凌駕したボリュームなのでお得ですね!!
まとめ
というような感じ。
いかがだったでしょうか。とにかくおもしろかった。そして読むタイミングってやっぱりあるんだな、と思います。
今読めてとっても良かったです。みなさんもぜひ、生きがいをこの本で探してみてはいかがでしょう!!苦しい話ですけどね。。。