大学生と名画その64「パルプ・フィクション」(1994年)
「パルプ・フィクション」(1994年)
こんにちは。昨日の晩に「イカスミ汁」を飲んだので、暗黒ウンチが出ました。人体って不思議ですよね。
そして彼女と会うことがあるんですが、その時は映画を見るのをやめろ。と母親に言われました。どうやら自分と一緒にいる時間でさえ自己を優先するな、「生活」を想像できなくなって振られるぞ。ということだと思いますが、自己中心的なところを直すもなにも高校生時代の自己中心的どころじゃないキモキモ黒歴史を体験している彼女にはもはやそんなの屁でも無いんですよ。なんなら徐々に真人間になるのをサポートしてくれていますからね。心配かけて申し訳ないです。
今日はそんな映画の「パルプ・フィクション」です。
毎日映画を見ていると、感情が死んでくるんですよね。私は映画を見ている時に、「作者がいいたいこと」じゃなくて「私が感じ取れること」を考えるようにしています。なんか作者が思ったことと違うことを、こう言ってると思います!!みたいなこと言ったら恥ずかしいので「私が感じたこと」として書いているつもりです。
自分の保身に走ってたらめっちゃ脱線した。
とりあえず映画を見てていろいろ思うじゃないですか。
「戦争って怖いな」とか「貧困の格差ってダメだな」とかね。そういうのってたまに映画を見てるとすっごい刺さるんですけど、なれるんですよ。
「ハイ貧困ね。あの映画でもそうだったぞ」とか「愛ね。そうね。大事ね。」みたいになってくるんですよね。まあ余計な感情がはいってこないのでラッキーっちゃラッキーなんですけど。
「そういうマンネリ化する波」みたいなのが毎日映画を見てるとくるんですよね。それをぶっ壊してくれたのが、「パルプ・フィクション」です。タイトル通り。
これは間違いなく死ぬ時に孫に「好きな映画トップ10教えて!!」といったらはいっているタイトルだと思います。
私の尊敬する人のベストスリーにもはいってました。
リストによると
ジャンル:問題作
主演:ジョン・トラボルタ
コメント: 3組の殺し屋の話が脈絡なく交差する。タランティーノのファンにはバイブルのような映画。
リストより
ってな感じ。クエンティン・タランティーノってめっちゃ有名な監督ですが、タイトルを知ってる映画はこの「パルプ・フィクション」と最近公開したやたら長いやつ。あとはサミュエルエルジャクソンのやつですね。
なんかあんまり私が聞いたことあるヤーツはないのに、こんなに有名なのはこのすっげえ映画があるからなんですよね。この映画マージで面白いっすもん。
カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた、クエンティン・タランティーノ監督の犯罪活劇
監督2作品目にして、タランティーノの名を世界に知らしめた怪作。複数のエピソードが絡み合う構成、ユニークな会話の応酬、絶妙な選曲など、独特なセンスが光る。
強盗カップルのパンプキンとハニー・バニー、冴えないギャングのビンセントとジュールス、ギャングのボスのセクシーな若妻・ミア、八百長試合を持ちかけられたボクサー・ブッチ、一見無関係な彼らの運命は複雑に絡み合い、やがてひとつにながっていく
ジョン・トラボルタは本作を機に再ブレイクを果たした。
U-NEXTより
というあらすじです。どうやらアカデミー賞とかにも7部門くらいノミネートされているらしいです。一つのジャンルを作ったと言ってもいいくらいですね。
こういういろんな出来事が、実は全てつながっている。っていう作り小説とかにもありますよね。テーマをもたせた短編集なんかもそうですし、具体的に言うと奥田英朗さんとかが好んでやっているような感じ。あれを長尺でやっているわけです。
場所も時間軸も目まぐるしく変わる、少しプロットなため難解な印象を受けます。しかも物語がリンクしていく感覚が気持ちいいので、単なる「伏線気持ちええー!」映画っぽく受け取られがちですが、しっかり一貫したストーリーがあります。
「イージー・ライダー」的な少し不親切な感じじゃないのが、また人気になる理由だと思いますね。
どんな映画?
ほんとキレイで面白い映画です。死んでしまった感性を取り戻してくれる映画でした。ちゃんとドキドキしたし、ちゃんと笑ったし、ちゃんと唸ったし、ちゃんとくらいました。見終わってから30分くらいはエロ漫画のヒロインの事後みたいにふやけてしまいました。こういうドカンとした良いのが挟まれてるから、このリストやめられないんですよね。
あらすじで書いていた登場人物たちが、大暴れします。人が行動するときってもちろん意思が基準になっていますが、その当たり前を気づかせる構成でしたね。みな生き生きと生きている。多分映画の中で実際に生きているのは、すずさんかパルプ・フィクションの人たちだけじゃないでしょうか。そういう素直なキャラクターたちです。
そして音楽も、誰もが海辺か、組体操の時に聞いたことのあるテーマソングから始まり、上の画像で流れていたツイストを踊るシーンだったり、ギャングたちが仕事をしているときだったり、めちゃくちゃかっこいいです。音楽の緩急もいいですね。
そしてセリフ。登場人物のなかでギャングの部下である、ビンセントとジュールスがいるんですけど、彼らを筆頭に掛け合いがうまい。ナチュラルでアホくさくて、笑えるんですよね。これはどのキャラクターもそうです。とにかく掛け合いのシーンは良い。
そしてついでにコメディ要素にも触れます。そここそ最高にエンタメなんですよね。ずっと言っていますが、バランスです。今回はフィクションとリアリティのバランスの良さ。やはり物語っていうのは流れがありますから、必ずなんらかの「都合がいい」ことを起こさないといけません。例えば、最後に悪役の銃が詰まってしまったり、弾丸が当たった場所にトランプはいってて致命傷を避けたりです。それってフィクションを成立するために仕方がないことだと思います。
そういう都合のいい部分が非常にうまいです。
張り詰めていて、実写映画らしいシーン中心にして、エンタメとして成り立つ大胆で細かいフィクション的展開がはいっていて非常に見やすい。しかも面白い。この綱渡りが超いいです。
この微妙なバランスが、白けるか、楽しめるかの鍵を握ってるんだと思います。有無を言わさず楽しませる構造が天才的です。ガチおもろい。
好きなところ
全編に渡って好きですが、何故こんなにドキドキするのかなあって思いながら見てる時に、象徴的なものを見つけたので記述します。
それはカメラワークです。映画は色んなものの組み合わせなので、脚本やモンタージュと相まったカメラワークによる影響がとても大きく感じます。それはそのはずで見る人の感覚で大事なのは目ですよね。音楽もセリフも良いですが、私達は視覚で映画を見ます。カメラワークって気づかないだけでだいぶ重要なんだなと気付かされました。カメラが無いと何も始まらないわけですからね。視線を誘導したり、あざむいたり、没入させたり、突き放したり、映画のからくりの多くはきっとカメラが作っているはずです。
それを感じたシーンが、八百長をさせられたボクサー・ブッチのシーンです。このボクサーのエピソードをかいつまんで説明します。ブッチはロートルボクサーで限界が近いと言われています。そいつにギャングのボスがお金上げるから負けてね。っていうんです。でも彼の内面には何かが潜んでいるんですよね。案の定、試合当日我を忘れて相手をKO、どころか殺してしまいます。はじめの一歩でも人は死なないのに。
ブッチは金も勝利も手にしました。それはギャングが許さないですよね。そこから命を追われる身になります。そしてブッチはある大切なものをアパートに取りに行くんですよ。ギャングが待ち伏せしているかも知れないアパートに!そこからのシーンは鳥肌がたちました。
音楽はなし、ハンディ撮影です。あの高さ揺れは手持ちで撮ってると思います。
ブッチは、念の為車を近くの空き地に止めてそこからゆっくり歩いて裏からアパートに向かいます。
今までは固定カメラ(移動ショットはもち、ある)でとっていたのがいつの間にか変わってて、ブルース・ウィルス扮するブッチの背後からカメラでじっくり撮っていきます。
この隠密作戦の緊張たるや。手持ちにした事によってさらにリアリティがでてマジで緊張するんですよ。
面白いのはこっからで、あんなにゆっくりブッチの背中をとっていたのに、カメラがブッチを追い抜いちゃうんです!!!!ありえないでしょこんなこと。普通登場人物が見ているものを表現する時は、カットバックっていうのを使います。例えば、人の顔→ビル→人の顔っていうふうにカメラを行ったり来たりさせることで視線を誘導しますよね。
それが手持ちで、ノーカットで「にゅー」ってブルース・ウィルスの右肩あたりからカメラが通っていくんですよ。こんなのしたら普通は冷めちゃいますよね。だってメタ的な表現ですから。明らかに「撮ってる人」を認識させてしまう。
それが逆にいい。
逆にいいんです。このギャングが待っているかも知れない、どっかに隠れているかも知れない・・・っていうドキドキがさらにリアルになるんです。カメラをすり抜けた疑似ブッチ状態になります。あの間、撮り方、風景、音楽じゃないと、「え?カメラマンいんじゃん笑」ってなるんですが、あの数秒だけ見てる俺達も映画にいるみたいになるんですよね。没入どころかシンクロします。あそこは痺れました!!!!
くうううもう一回みたい!!!!
あとは変な構成です。複数の事象が、同時多発的に起きて、それがつながっていく。だけではなくてそのつながった一つのストーリーの時系列まで弄っちゃってるんですよね。最初のシーンがクライマックスだった!みたいな「アルキメデスの大戦」みたいな感じです。こっちのが先なんですけどね。
それが単純に回想独白形式だとか、そういうんじゃなくて行ったり来たりして最後ちょっと進むみたいな、構成になっています。
まとめ
いやー超面白かったす。これも何度でも見れる映画でした。
ちょっとだけ「感じたこと」に関する話なんですが、3回出てくる言葉があります。あれこそパルプ・フィクションです。あれがストーリーになっています。
サミュエルエルジャクソンが言う聖書の引用文ですね。あれをタランティーノ監督っぽく表現したのがこの映画なのかなと思いました。すべての行動が帰結する用になっていて、ラストシーンのめちゃくちゃにかっこいい銃をしまうシーンで終わる。時系列的にはそこからまた色々あるんですけどね。そういう難しさとシンプルさをうまく両立した超絶おもしろ映画でした!!!!!いやあ楽しい。