ヒモ夫の日常

駄文、愚文

大学生と名画その63「張込み」(1958年)

「張込み」(1958年)

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これまたおもしろい。

こんにちは。ここに書くことさえなくなりました。

今日の映画は「張込み」です。みなさんお気づきでないかと思いますので、言いますと松本清張さんが書いた原作小説を映画化したものです。どうしてこのシーンがサムネイル画像になっているのかはわかりませんが、この映画も非常に面白かったです。最初からほどよくサスペンス感があってドキドキするのですが肝心の張込みをしているうちにいつの間にか「事件」とは関係ないところに目線や思考が移動させられて、あっという間に引き込まれて本質に触れさせていくって感じです。やばい。最初からこんな事書いたら書くことなくなる。マジで。

リストによると

ジャンル:ドキドキ

監督:野村芳太郎

主演:宮口精二 高峰秀子

コメント:犯人の情婦の家を張込んだ刑事。だが、向かいの窓から見る女の日常は、静かだ。その日常に、小さなさざ波が立った日・・・・。その日が撮りたくてTVドラマにしたが、僕は見事に失敗した。 

 だそうです。ここに来てやっぱりディレクターが書いていることが発覚しました。しかも失敗したそうです。でもすごい映画でしたね。このコメントを見てもなんか分かるでしょう。

松本清張の同名小説を映画化。凶悪犯を追う刑事をドキュメンタリータッチで描く

野村芳太郎監督が、緊迫した張り込みシーンを徹底したリアリズムで活写。脚本は黒澤明の一時代を支えた大御所・橋本忍高峰秀子が元恋人に会って艶めく人妻を演じている。

警視庁捜査第一課の下岡と柚木は、質屋殺しの共犯・石井を追って佐賀行きの列車に飛び乗る。石井は、3年前上京の時に別れた女・さだ子に会いたがっていたのだ。2人は、今では人妻となったもの静かな女・さだ子を見張るため、猛暑の中で張り込みを続ける。

 こんな感じのあらすじです。ドキュメンタリータッチっていうのはこの前の映像の授業でもやりましたが、撮影方法も影響しているらしいです。映画ってスタジオ撮影がおおいんですが、ロケ撮影をすることで多少は安上がりですし、やっぱリアリティがでるそうです。この映画もそうでした。

監督の張り込み情熱もすごかったし、脚本、主演女優さんも超上手でした。この静かな女がこの映画のキーになっていくんですよね。面白いです。

どんな映画?

上でちょっと書いてしまいましたが、トリックのような映画です。私いつも明日の映画なにかなーって確認するんですよ。今日の映画を見る前に。これも現実逃避なんですけどね。その時点ではゴリゴリのサスペンスだろうなーって思ってたんですよ。まあ確かにそうなんですけど、入り口でそういう感じを出しておいて、中盤、終盤とまた別の色が少しづつ滲んてくるような感じ。バランス感覚が天才的です。TVドラマで表現するのはほんとうにすごい挑戦だと思います。でもおしゃれっていうか卓越性があってかなりかっこいい作りの映画です。

少し細かくプロットを話していくと、ある殺人事件が起きて犯人を取調べすると共犯者がいることが発覚します。それでその共犯者・石井の捜査が始まるんですね。それで一番有効な手が「張込み」です。現代では週刊誌の人の得意技になっちゃいましたがこの当時は捜査と言えば張り込み、張り込みと言えばアンパンと牛乳だったわけです。目的としては、馴染みのある店だったり、人物の元を犯人が尋ねるかも知れないからそこを抑えておく、というものですね。もう現代ではどこもかしこも防犯カメラ設置がされていますし、GPSだのなんだのと発達しているので、この張り込みというのは廃れてしまっているんですよね。私実は張り込みを真面目にしているシーンを始めてみました、ドキドキしますねーありゃ。楽しそうですしね!なんつっても。コントとかの張り込みのイメージしかなかったですが、あれは相当骨が折れる作業です。大変そう。そんなこんなでドキドキの張り込みをしていると、なんとなく女の人柄がわかってくるんですよ。さだ子さんは石井と別れたあと、子持ちのお金持ちおじさんと結婚しています。一気に3人の子供が出来たわけですね。毎日、家事をこなし堅物でケチな旦那の言うとおりにし、子供たちともなんとなく気持ちが通じずに過ごしています。最初は、凶悪犯の元カノなわけだからどんなやつなのか、どんなドンキにいそうな金髪女なのかと、視聴者共々思っているわけですが、全然そんなことはない。逆に同情をしてしまうくらい気の毒に見えてきます。で最初はそうやって見ていくわけですが、合間合間に回想シーンが入ります。またそのモンタージュが良いんですよ。主に3つかな。回想がところどころはいっていきます。

1:事件発生から張り込みに至るまでの情報 

2:さだ子の半生 

3:主人公柚木の半生

この3つが回想シーンとして入れ込まれています。サスペンス度を更に高めるシーンや、さだ子と柚木ねの境遇や内面を見せたり、っていうのを隙間に上手いこと入れていく。それによって話に含みがでて違う物語に形を変えていくんですよね。人物の心情もストーリーもいろんな変化が楽しめる細かい設計図になった映画です。ブログを書いていて超面白そうな映画だなーって思ってきました。

好きなところ

まずこの作り方がすごい。さざめきが立った、つまり石井が彼女のもとに現れた時。もうすごいです。もちろん捜査をする主人公のドキドキ感もですが、二人の関係、そして主人公の内面と同時多発的に色んなものが押し寄せてくる。非常に面白いです。

そしてセリフでは「ばってんもヘチマもなかよ!」というセリフがありました。可愛くて好きです。こういう言い回しってたくさんありますよね。嘘もヘチマもねえぞ!とかでももだってもありません!とかそういうのを集めてみたいなと思いました。

そして好きなショットですが雨のシーンです!!あそこはキレイ!!基本さだ子が外出すればついていくんですが、たまたまその日超豪雨だったんですよ。そこで傘をさして歩く柚木を映すとこなんですが、天才的にキレイです。和傘(当時は傘といえばあれだったのではないでしょうか)をさしている主人公を広めのバストアップくらいの画角でとってて、雨粒と白い和傘と、俳優さんっていう少ないものでズバッと決めているショットでした、あれは超かっこいいですね。シャレオツです。

まとめ

大雑把に言うと、男女の話でしたね。しかも深い男女の関係の話でした。ああいう入口からこういう出口にも行けるんですね。しっかりと表立ったテーマのサスペンスも成立させつつ、にじませた感じです。バランス感覚がすごい映画でした!!

明日の映画はパルプ・フィクションです。これは楽しみですね。