ヒモ夫の日常

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【考察・感想】個人的夏の覇権アニメ『SonnyBoy』  長良と瑞穂の思春期が起こした漂流

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『SonnyBoy』

画像が自前のグッズで申し訳ないですが、良いデザインだったので。

 

少し前からTVアニメをチェックするようになり、なんだかんだでいつも素敵な作品にであっているため、この夏シーズンからは個人的に最も良かったアニメ選んで書き残そうと思いました。

 

・候補アニメ

とにかくTVアニメは毎シーズン量があるので、全てを視聴したわけではありませんので御了承ください。とはいえ『白い砂のアクアトープ』『かげきしょうじょ!』『ひぐらし卒』などTwitterを中心に話題になっていた作品はあらかた追っていたと思います。

 

・選定基準

アニメに限ったことではありませんが

 

○冒頭(物語序盤の展開や作り、アバンタイトルなどのエンタメ性)

○個性(全他作品と比較した際の該当作品の素敵なポイント等)

○音楽(テーマソング、BGM等)

 

この基準で私が好きか嫌いか、面白いか面白くないか決めています。アバン至上主義という造語を作ってオタク笑いをするほど作品の冒頭部が好きです。

 

 

夏アニメで私の中でいわゆる覇権を取った作品は、『SonnyBoy(サニーボーイ)』です。

次点で『平穏世代の韋駄天達』になります。その他作品も毎週すごく面白かったのは大前提です。

 

 

 

『SonnyBoy』

気になる方はぜひ公式HPを

anime.shochiku.co.jp

 

視聴してなんのこっちゃわからない方はぜひ下記のインタビュー記事を。

febri.jp

 

febri.jp

 

 

・概要

 

インタビューにもあるように、複雑なように見えてシンプルな思春期の少年少女たちを描いたボーイ・ミーツ・ガールな青春TVアニメになります。

そのベースに不思議でコッテリとしたSF要素を加えてあるといった形です。

 

教室ごとどこかの島に漂流してしまったとある中学校2年生の子たちが、多種多様な超能力に目覚め(大半は指が光るだけなどシュールな感じ)島で生活をし、元の世界に帰るための方法を模索する。

 

というパッケージですが、蓋を開けてみると異能力バトルや甘酸っぱい恋愛など娯楽性のあるポップな内容では無く、普段の学校生活と本質的には変わらないような思春期の不安や争いが淡々と行われます。その一方で能力や漂流についての表現や解釈はかなり高度であったり、シュールに語られ異様な雰囲気を醸す作品になっています。

 

アニメ好き芸人としても知られるハライチの岩井さんも「なんか面白い」と評しており、その話を聞いた伊集院光さんも視聴後「なんか面白い」と発言しておりました。

言語化するのが少し難しい作品で、だからアニメーションで描いているんだなとも思います。

かくいう私も、放送第一回を見逃してしまい、そのままなんとなくで見ていたので最終回直前の11話まではよくわかんないけどキャラクターが可愛いな~なんて思いながら見ていました。しかし監督も事実上の最終回だと語っていたこの11話の放送を見てなんだか涙が止まらなくなってしまったのです。

 

そこでなんか面白いで流してしまってはもったいないと思い最終回に合わせて見返し、本日最終回を視聴しました。

 

一言でいうと、やっぱりなんか面白かった。です。もちろん細かいことは後述しますがそれに尽きる作品なのかなとも思います。描いている事が、主人公の微量な成長であったり、なんとなく過ごしてきた青春期がテーマにあるのでそれで良いかと思います。

 

ここで見てみたいと思った方は、アニメを視聴してから読んでくださいね。

 

 

長良と僕らには対して差はない

この物語はやっぱり、長良の成長を描いた作品だと私は解釈します。

『SonnyBoy』 のテーマソングは銀杏BOYZの「少年少女」ですが、文字通りテーマソングなんですよね(笑)おかしな文章ですが、ほんとにそうなんです。

 

この作品にOP、EDみたいなものは無いんですよ。各お話の最後にこの銀杏BOYZの「少年少女」が流れます。夏目監督が第一話はこの曲のためのものだ、というのも頷けるほど作品にぴったりで素敵なテーマソングです。見逃していた自分を悔いるほど完璧な冒頭です。序盤の6話あたりまでは、SF世界観の構築と中学生たちのシュールな日常で展開されていくのでサクッと見れて楽しいんです。それが良かった。

 

 

長良という自分自身で精一杯な少年が、漂流を経て少し外の世界に触れられるようになる。そんな誰でも経験したことのあるような些細な変化が『SonnyBoy』のストーリーです。少しさみしい家で育った長良は、他人とのつながりを持てないでいて、鳥の死骸を見ても自分の事ばかり考えている。彼は漂流から戻ったある日、駅にあったツバメの巣を心配する素振りをみせます。

そこが彼の変化です。可哀想だと思えるようになったのか、それとも希へ下心かわかりませんが少なくとも自分の心から一歩外に出ることができたわけですね。

 

これは瑞穂も似たようなものです。ないものねだりしてしまう気持ち、自分や周囲に物足りなさみたいな気持ちですよね。自分が2人いれば楽しいんだろうなとか、退屈でコピーみたいな奴らだな!とかね。瑞穂も大人の教師と色々あったみたいですし、そういう心を変化させるきっかけが漂流なんだと思います。

 

思春期って誰でもそうじゃないですかね。自分という範囲がすごく狭くて、人や事柄をある一定の側面でしか捉える事ができません。すぐにキャパオーバーしてしまうからですね。でも失恋したり、親が死んだり、ボランティアに行ったり、挫折したりセックスしたりと過ごしていくうちにだんだん世界の輪郭が見えてきていろんな側面を想像し始めるというか。

 

誰にでもあるような思春期が収束していく過程を、新鮮に描いたのが『SonnyBoy』だと私は思います。複雑に楽しく、現代的に長良の思春期を落ち着かせてみせたんですね。アニメの作り方とか音楽とかたくさん魅力的な個性がありますが、1番私に刺さったのはこの部分です。

だから漂流してないけど、長良をみながら先輩風を吹かす事ができますね。

 

 

「少年少女」

youtu.be

 

このテーマソングがとにかく好きです。最終回の魂の弾き語りもえげつなかったな。

 

この曲が第一話のため、そして最終話のための曲でしたね。

長良と希は2度出会うわけですが、どちらにもぴったりと重なる曲でした。すごい仕掛けですよね。

第一話では、転校生の希と異世界で出会い長良という寂しい少年が「ここにいてもいい」と言われたようなそんなイメージでしたが、最終話で希と目を合わせ1人歩いていく長良が、全て許されこの2000光年のスピードでたどり着いた世界で生きていくのを後押しする、みたいな。

 

個人的には大満足な最終回でした。ほんとうに些細なドラマだったな~素敵やん?と。

長良と瑞穂はそんなに頻繁には会わないと思います。2人で馴れ合うだけならば帰ってくる必要はないからです。瑞穂はラジダニみたいのがタイプですしわざわざ彼やネコと決別し彼女の思春期を収束させ前に進んだ意味がないからですね。

 

漂流は長良の自分でいっぱいいっぱいな気持ちと、瑞穂の自分や周囲に対する物足りなさみたいな気持ちによって起こされたもの。彼らはそれを乗り越えて、次にすすむために戻ってきたわけですからすごく仲のいい友達ではあり続けますし、その先くっつく可能性は否定できませんがしばらくは交わらないでしょう。

 

 

どの学園モノともSFものとも違う観点で小さな変化を描いた作品でした。好きです。