ヒモ夫の日常

駄文、愚文

【映画レビュー】時代に抗え!ミクロラブコメの傑作『サイダーのように言葉が湧き上がる』レビュー

『サイダーのように言葉が湧き上がる』

 

f:id:ofsp0604-oto363:20210725212706j:plain

渋谷沈むくらい泣いた

 

有名なオタクツイッタラーが、「萌を思い出した」とつぶやいていたので見に行ってみました。彼は少年向け深夜萌アニメのいわゆるお色気にニヤニヤしてたけど、萌の原点はこれであった!的なことを言っていました。

 

僕はラブコメが大好き。田舎の童貞だった僕を唯一ドキドキさせてきたのは、いち100であり、ToLOVEるであり、ニセコイであり、ビデオガールであり、アイズであり、らんまであり、管理人さんであり、とらドラであり、恋染紅葉であり、ToLOVEるダークネスであり、初恋限定でるからです。

 

そんな私に必要だったのがこの作品でした。

 

めちゃくちゃ良かった。序盤こそ乗り切れずにモヤモヤしたものの、あるシーンで一気に引き込まれ、納得の行かなかった部分もきちんと意味づけることもでき満足です。

 

勝手に、「ミクロラブコメ」とかカッコつけてますが後述します。とにかくよかった。メモをもとにざっと。

 

www.youtube.com

 

 

昨今の劇場アニメはとにかく、美しく壮大ですよね。

お金もそうですが、脚本やストーリーにも複数のレイヤーがあってやや難解な一面もあります。

 

この映画は、一つの街のイオンモールでほぼ完結します。

 

タイムリープ、無し!

 

広大なサイバー空間、無し!

 

世界の危機、無し!

 

人と話すのが苦手だからって俳句に逃げてる弱い男と、出っ歯なのを気にしてる女子のボーイミーツガールもの

 

というだけの話です。なんと狭い。でもそれがいいんです。

 

冒頭にスケボーを使ったアクションシーンがあったのですが、あんまり意味がなくて、キャラクターの性質を示すには良いが物語の方向性にも合わないしなんだろうって感じだったんですけど、私の解釈では

 

実写さながらのきれいな世界や、仮想空間なんてないただの街の一部であるモールと言う狭い世界でも、面白くて刺激的で美しいものなんかいくらでも描けるぞ!

 

ということなのかなと思いました。舞台は素朴でも、良いものを魅せる力があるぞ!ということだと今は理解してます。

 

そんな中で繰り広げられる二人のラブコメです。

 

好きなシーンと主人公たち

 

主人公はコミュニケーションを取るのが苦手。きっかけはわかりませんが、「俳句」にハマってます。

 

俳句は受け手が書き手の心情を慮って鑑賞するものなので、その枠組を便利だと感じているんですね主人公は。

 

決して、「好きだから」じゃない。

 

この物語は俳句をテーマにしていますが、ただの俳句好きの少年じゃないんです。

 

主人公が自分のコンプレックスである、コミュニケーション下手の逃げ場として選んだのが「俳句」だった。ただそれだけです。

 

私の好きなシーンは主人公のそんな思いがわかったシーン。

 

自分の俳句を声に出して読んでみろ、と言われたとこです。

 

恥ずかしすぎてうまく読めない主人公。俳句の講師にぶつくさ文句を言うんです。

 

「俳句は読む芸術、声に出すもんじゃない」

すると先生は、声に出さないと伝わらない機微もあるよ。と。

 

返す刀で主人公は、

「伝われよ。」

 

というんですね。

私もその気持はすごくわかります。音にするとどうしても安っぽく、軽くなってしまう気がする。ごちゃごちゃ長話は嫌われるし、伝わんないし。

 

それならこうやって書いてるものを読めよ。それで俺を理解しろよ。なんてわがままを言ってしまいたくなる。

 

ここで丁寧に主人公と俳句や言葉、コミュニケーションに対する関係を描いています。

 

俳句の美しさや醍醐味を愛しつつ、俳句に言葉の不便さと自分のコンプレックスをぶつけてるんですね。弱みから逃げて、これに頼るしか無いと思い込んでいる。

ほんとは彼も人間なので、大きな声で誰とでも話すことはできるのに。

 

この辺のキャラとテーマ説得力が細かくて良いなあ~と。こういう厨二臭さは男の子の特権かな~と思いますね。ヒロインもとっても素敵でしたが、当方男なので女心はわかんないです。

 

世界を変える!は必要か

映画の気持ちよさって、やっぱり物語を通してのキャラクターの成長や変化なんですが、今作はそれもささやかなもの。

 

でもそのささやかさが、良い。

 

彼らの変化も、成し遂げたことも小さな日常の一部でしたが、あのキャラクター描写とも相まって距離がぐっと近くなります。

丁寧さがあれば、英雄になんかならなくたってしっかり感動します。きっと同じ高校生くらいの方が見るとまた共感できてグッと来るだろうなって思います。

 

自分にもそういうヒロインがいれば……っていう甘酸っぱさも込で!

 

 

そして私もラストにかけてめちゃくちゃ泣きました。シン・エヴァを初日に見て、エヴァが終わった……ってなったときと同じくらい泣きました。

 

でもそれは共感とかではないんですよね。もうヒロインなんて期待してないし、おっぱいの感触について考えてたら夜が明けた、なんて事もないんです。

 

私はラブコメが大好きですが、アニメも漫画も今注目してみているのはほとんどありません。なんか乗り切れない。別に大人になったつもりでもないし、つまらないとも思わない。それなのに読めないのがずっと不思議だったんですが、ようやく謎が解けました。

 

いつの間にか、主人公目線だけじゃなくてキャラクター同士の恋愛を客観的に見てキュンキュンするようになっていたということがわかりました。

 

中学生の頃なんかは、主人公と自分が一体となってラブコメを読んでたんですよ。自分だったらどのヒロインを選ぶか、どんな言葉をかけるのかなんて考えながら体感的にラブコメを楽しめてたんです。

 

少年誌はいかに男子をキュンキュンさせて悶えさせるかにフォーカスしてるので、描き方も体感型なんですよね。それが仇となってるんです。

 

私はもう主人公とは一体になれないから、客観的に見ててヒロインがやりすぎちゃうと引いちゃうんですよ。当時なら絶対にドキドキしてた行動もはたから見ると何やってんだ?ってなっちゃう。

 

そこでおっぱいは当たらんやろ。

って思っちゃうんですよね。

 

だから今作のようなさっぱりした、甘酸っぱいやつとか、少女漫画BL漫画女性作家のラブコメなど精神面に力入れてる作品のほうが今の好みにあっているんですよ。

 

そんな状態で、素朴で清純なキャラクターたちや、その丁寧な表現、綺麗なアニメーションが入ってきたからあんな泣いちゃったのかな~と思います。

 

ラストシーンはひたすら心のなかで、こういうので良いんだよ!!と叫びむせび泣いてました。自分が求めていたラブコメがあった~!!っていう気持ちでした。

 

これからも中高生たちを影からニヤニヤ見守るラブコメ生活をしていきたいと思います。

 

f:id:ofsp0604-oto363:20210725224825j:plain

パンフがとても可愛かったので、おすすめです。