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【GW映画レビュー その12】 現実vs虚構  『シン・ゴジラ』

 現実vs虚構  『シン・ゴジラ

 

 

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最高峰の映画でした

 

 

 

 

ゴジラシリーズの中で一番凄い映画だと思います。好きなのはメカゴジなんですが。

 

というよりも、邦画の中での傑作と言うべきかもしれません。私はゴジラシリーズ、ド素人ですけども、ゴジラ映画と果たして呼べるんですかこれは。

 

全く毛色が違う。ゴジラが登場しているので形式的には、ゴジラシリーズと言えるんでしょうけど、ちょっとやりたいことが別物すぎるでしょうこれは。

 

とにかくすごかった。私はDVDや地上波放送含めて、今回見るのが3回目か、4回目だと思うんですけど、やっと『シン・ゴジラ』を体験する事ができたと思います。当時高校生成り立てくらいだったと思うんですけど、

 

ゴジラの熱線が今までと違ってかっこいい」

 

程度の感想しか無かった。

でもなんですかこれは。鬱映画って言葉は大嫌いなんですよ。どれだけ主人公がひどい目にあおうが、救いがなかろうがフィクションです。それで落ち込んで鬱になっていては、本末転倒でしょう。

 

でも『シン・ゴジラ』こそ鬱映画ですよ。厳しい現実をこれでもかと見せつけられる。それがよりによって、虚構と相対することで描かれるんですよ。一体現実vs現実だったらどうなるんですか。

 

そして最後はきちんと「虚構」になるのがまた酷い。残酷すぎる。

 

しかも残酷なほどに美しく、強いラストなのがまた意地悪です。ラストシーンで感動してしまう自分が愚かで仕方なかった。

ですがそれが「映画」であるし、人間でもあるんですよね。

 

『シン・エヴァンゲリオン』で碇ゲンドウが言った「現実と虚構を等しく信じる生き物」という言葉をより実感しました。それが希望的信頼であり絶望的信頼でもあるんです。

 

 

大まかな感想はこうでした。とにかく怖くて不安で、それでいて美しい虚構でありました。詳細は下記で。

 

ここまでだけでも読んでいただけたらありがたい。そして若者はもう一度『シン・ゴジラ』を見てほしいです。

 

 

 

あらすじ

東京湾・羽田沖—。
突如、東京湾アクアトンネルが巨大な轟音とともに大量の浸水に巻き込まれ、崩落する原因不明の事故が発生した。

首相官邸では総理大臣以下、閣僚が参集されて緊急会議が開かれ、「崩落の原因は地震や海底火山」という意見が大勢を占める中、内閣官房副長官矢口蘭堂長谷川博己)だけが、海中に棲む巨大生物による可能性を指摘。内閣総理大臣補佐官赤坂秀樹竹野内豊)をはじめ、周囲は矢口の意見を一笑に付すものの、直後、海上に巨大不明生物の姿が露わになった。

慌てふためく政府関係者が情報収集に追われる中、謎の巨大不明生物は鎌倉に上陸。普段と何も変わらない生活を送っていた人々の前に突然現れ、次々と街を破壊し、止まること無く進んでいく。

政府は緊急対策本部を設置し、自衛隊に防衛出動命令を発動。さらに米国国務省からは、女性エージェントのカヨコ・アン・パタースン石原さとみ)が派遣されるなど、未曽有の脅威に対し、日本のみならず世界もその行方を注視し始める。

そして、川崎市街にて、“ゴジラ”と名付けられたその巨大不明生物と、自衛隊との一大決戦の火蓋がついに切られた。
果たして、人智を遥かに凌駕する完全生物・ゴジラに対し、人間に為す術はあるのか?

 

シン・ゴジラ - 映画・映像|東宝WEB SITE

 

 

ゴジラシリーズのやりたいことと違う、というのは訂正します。

 

ゴジラシリーズで表現したかったことをやりすぎたんです。

 

技術も監督も、時代も、何もかもが『ゴジラ』をやるには行き過ぎていた。その結果が『シン・ゴジラ』だったのだと思います。

 

庵野監督は、行き過ぎるほどの『ゴジラ』の具現化を「恩返し」と語っていました。樋口のしんちゃんは、最高で最悪の悪夢を、と語っていました。

 

見事それに成功したわけですね。

 

私はこのブログで、初代ゴジラをリアルタイムで見た人は、どんなに怖い思いをしたか。

 

という話をしましたが、こんな気持だったんですね。

 

ゴジラはその都度時代に合わせて、様々なものを背負い、人間の前に現れた。そしてそのたびに”こんな思い”をさせてきたのだと思います。

 

そして今回は、ゴジラの背負った虚構があまりにもリアル過ぎました。それ故にいろんなものを露呈させたのだと思います。

 

いやー、まいったね。

 

どんな映画

壮大な訓練映画ですよね。

 

キャッチコピーである「現実(ニッポン)vs虚構(ゴジラ)」というのは読んで字の如く、虚構であるゴジラと現実的に戦うことで、日本の失敗や弱さ、不便さ、不条理さを見せるというもの。

 

そしてその先に、実際の災害や戦闘になった時、どうなるのかシュミレーションしましょうよ。ということでもあります。

 

日本は、安全ですか?ということです。

 

子供だった私は、そのシンプルなテーマに気づけなかったということです。

 

これまでは、怪獣に頼ったり、架空の兵器や、博士に頼ってましたね。いわば「現実らしい虚構vs虚構」だったわけですよ。というかゴジラ自体も地球に配慮した生物でした。

 

実際に地球を守ったりもしましたが、日本に倒される可能性を十分に残した存在だったわけです。もちろん、どうやって物語を終わらせるか、ゴジラを打ち破るのかをしっかり考えてから作っている。虚構ですからね。

正確に言うと

「現実らしい虚構vs慮った虚構」

 

だったのかもしれません。

 

今作シン・ゴジラ

「限りなく現実に近い虚構(ニッポン)vsかつて無いほど思慮のない虚構(ゴジラ)」

 

になると思います。

 

 

だからあんなにもやもやするんですよね見てて。

私が歳をとったこともあるし、上京してきたということも関連してると思います。

 

なんか映画を見たあとの健全な心持ちですよ。

生活してる中で常に環境問題とか、国の問題とか四六時中マジに考えてる人なんかごく少数なわけで、みんなどこか見て見ぬ振りをして生きるしかない。でも映画をスクリーンで見てる最中だけは、テーマが投げかける問に、苦悩し矛盾して傷ついて、用意された結末にどうにか励まされ、なんとも言えないような気持ちで劇場をあとにする。

 

そして少しづつ日常に帰っていくものです。でも今回はその傷が深すぎて、主人公や庵野さんの結末に「無責任なこと言ってんじゃねえぞてめえ!!」とキレそうでしたね。でもこれが正しい。これが名作ってことだと思います。

もののけ姫とか、アラビアのロレンスとか、ああいうのを見たあとの気持ちと同じ気持ちになりました。殿堂入りですよマジで。

 

本来なら、日本が以下に脆いか、シーンやセリフなどをピックして解説するんだろうけど、それは他の人が何年も前にやっていると思いますので、そちらを是非。

 

というか見ればわかります。

 

好きなところ

好きなというか、言及したいところと言いますか。

 

・破壊される虚構

 

ゴジラというフィクションによって、現実というか我々が現実だと思っていたものがボロボロ崩れていくのを感じます。

なんだかんだ日本の御上の方々は優秀だろうなとか、政府のシステムは安心できるものだろうなとか、そういうよく知らないけど大丈夫だろうというのを破壊していく。

 

総理大臣って官僚の言いなりじゃねえか、とかシステムも手間がかかる会議ばっかで迅速じゃないじゃねえか、とかね。

これが、東日本のときもこれで落とした命があるんじゃねえか??

みたいな危険思想をも持たせる可能性があるのが怖いところであり、作品の優れた部分であり、人間の虚構を信頼する部分でもありますね。

 

そして民主主義の怖さを実感。民主主義というのは、言い逃れができない責任転嫁できないものです。主権が我々に与えられている以上、政府の行いは我々の責任でもあります。政治家は選ばれたから仕事をしているに過ぎない、批判する前にもっと学ばなければ行けないですね。

 

・感情移入してはいけない主人公

こいつが一番の戦犯じゃないかと個人的には思います。

 

劇中の現実(ニッポン)の中で限りなく虚構側の人間なのが彼です。

 

物語を成立させるための人物であり、劇中での希望です。しかし現実に彼のような政治家や官僚がいるかと問われると……

 

シン・ゴジラ』では彼がいなかったら、関東に核兵器が投下されていたことでしょう。でも私達が生活するこの世界は『シン・ゴジラ』じゃないんですよ。

 

だから彼の熱い言葉や、活躍、ラストシーンでの安堵感や希望が、逆に私達の絶望でもあるんですね。

もし現実で不測の事態が起きた時、彼のように日本や国民を救ってくれる存在は無いに等しいからですよ。

 

めちゃくちゃに感動しますよ。いい映画ですから。彼の懸命な姿に心を動かされるし、日本が虚構を跳ね返した健闘ぶりに涙してしまいます。それほど良い脚本だし、救いのある展開だからです。

 

でもこれは『シン・ゴジラ』なんですよ。日本の話しじゃない。だから庵野監督と、この主人公が憎いんです。

 

現実で救われる可能性はないとわかっていても、素晴らしい映画だから感動して泣いてしまう。でもきっと私達の世界ではそんなことはありえないんです。それが悔しいやら嬉しいやら、絶望するやらで憎いんです。

 

この感情が「虚構と現実と等しく信じる」ということなんです。それが人間の面白さなんですよ。

 

そしてこの感情を呼び覚ましてくれるものこそが、名作なんですよきっと。

 

 

なんか特撮がどうのとか、石原さとみの唇が完熟した果物みたいだったとかいろいろ書こうと思ったんですが、疲れたので、やめます。

 

 

まとめ

もしかしたら庵野さんと樋口のしんちゃんの最後の希望だったのかもしれないですね。

 

こんな官僚がいてくれー!とか日本はこうなるポテンシャルあるんだから頑張ってくれーー!みたいな。

 

僕はネガティブなクソ野郎なので、誰かに任せます。すみません両監督。

 

だけど、こういう気持ちになれる映画ってすごく好きだし大事です。こういう気持ちになれたからこそ、考えたりできることがありますからね。

皆さんお願いなのでもう一度『シン・ゴジラ』を見ましょうよ。

 

観てくださいよ!めちゃくちゃいい映画なので!