ヒモ夫の日常

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大学生と名画その45「青春残酷物語」(1960年)

「青春残酷物語」(1960年)

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邦画もマジでおもしろい

こんにちは。最近猫が好きすぎて夢にまで出てくる俺です。実家の猫は放し飼いをしていたせいか半野良みたいな性格なんですよね。半グレみたいな言い方になってますが。とにかく膝に乗ってきたり、ノーパソに寝てたり、zoom中に画面にインしてきたりとか、猫らしいことを一切やらないんですよ。そして実家を割と早めに出たのであんまり可愛がれてなかったんですよね。猫の毛アレルギーもありますし。今回のコロナ帰省でもう3ヶ月ほど一緒にいますが愛おしさが止まらない。東京の汚い空気に慣れたせいか猫の毛アレルギーも消滅。猫らしくはないですが、なで感を私が掴んだので、親密度が上がってもう最高です。

これなんのブログ?

今日はそんな映画の「青春残酷物語」です。なんかサムネとか、あらすじとか、タイトルとかで「自分では絶対選ばねえな、なんだこれ」とか思ってましたが、結果的に邦画でも五指に入るレベルの映画でした。大島渚監督の初期の作品です。荒々しいぞー!

リストによると

ジャンル:問題作

監督:大島渚

主演:桑野みゆき 川津祐介

コメント: 大島渚:脚本/監督。川又昂:撮影。若干概念的だが、若き大島渚監督は、青春の痛みを見事に描いてみせた。二人がリンゴを齧る長回しのシーンは、必見。(カンカンリストより)

 だそうです。大島渚監督の作品は初めて観ました。戦場のメリークリスマスとかの監督ですよね。名前は聞いたことがあるので有名なおじさんなのは知っています。たしかに若干概念的っていうか、「青春」とか「痛み」、「敗北」とかそういう概念がテーマだし、セリフにもたくさん出てきていたのでそうなるかなって感じです。扱うものが扱うものだけに、ショットやセリフ回しにパワーがありました。

最初の荒々しさから一点、ただりんごを齧っているシーンでさえ、すごかった。情報を与える順場やバランスが程よく計算されたかっちりとした作りですね。

最初ははちゃめちゃな展開やセリフや行動に、めちゃめちゃ笑いました、が後半にかけて別の笑いが出てました。いっぱいここに書きたくなりますが、後に回します。

ジャン・リュック・ゴダールも感嘆した、大島渚監督による鮮烈な青春ドラマ

日本のヌーヴェルヴァーグと呼ばれ、世界に影響を与えた大島渚の初期作。1960年の若者の気風、当時の日本の社会や政治情勢、そこに生まれたいらだちなどが描かれている。

中年男にホテルへ連れ込まれそうになった真琴は、大学生の清に助けられた。その後二人はお互いをいたぶるかのように遊び、体を重ねていく。清は人妻と不倫をしていたが、真琴のことが忘れられず同棲を始めた。やがて真琴が妊娠していることが発覚するが・・・。(U-NEXTより)

 なんでしたかね。死刑台のエレベーターかなんかのとき(自転車泥棒だったかな)にもヌーヴェルヴァーグっていう言葉が出てきましたね。イタリアの映画運動だったような気がします。この作品も世界に影響を与えたんですね。ちょうど学生運動とかやってる時期ですよねこの時。あ、その後か。ちょっと名残もありつつなんかボヤーっとしてる時代です。この時代がゆっくりと変わっていく境目なんですよ。そこで揺れ動く男女や世代、社会をこう青春っていう概念を使ってガツンと表現してるって感じですかね。こう何ていうんでしょう。おもしろいですよこれは。

どんな映画?

なんかいろいろ書きたくなる映画ですね。観た人と共有したり、いろいろこの時代のことに興味が出ました。60年代調べてみたいですね。若い二人が自分の欲望(善悪ないまぜの)に突き動かされてなんか意味のわからない生産性の無いことばかりしている映画です。そこにいろんなのをぶっこんでるんですよ。

登場人物が主人公たちの大学生チームと、その姉や姉の恋人の学生運動とか激動期に学生だった人たち、おっさん達っていう3つの構造になっています。おっさん達はあくまで補助的な位置づけで、この1つの時代を生き、青春が過ぎた人らと、変な時期に青春が来ている人たちの二項対立がおもな構成です。その対比から60年代の日本を描写しているって感じです。これすごいですよ。

でこんなかっちりとした造りで「難しそう!」って思うかも知れませんが、セックスしかして無いです。盛って100回くらいセックスシーンがあります。後述する好きなシーンコーナーでも書きたいですね。やってること画面に映っている事自体は非常にアホらしいです。セックスして、不倫して、二股して、金だまし取って、子供おろして、暴力ふるって、みたいなとにかくハチャメチャなシーンが多いです。でも少しづつ何かにじみ出てくるんですよね。そこがまたおもしろいです。

話は変わりますが、木曜日は映像の授業です。今日は物語分析をしました。そこで習ったんですが、映画には「ストーリー」と「プロット」というものがあります。

「ストーリー」・・・物語の内容。明示的なものも暗示的なものどっちも含まれる

「プロット」・・・スクリーン上に映し出されているもの。カメラで切り取られて観客に見せているもの

まとめるとこんな感じです。だからさっきの話で言えば、上で書いた構造の話が割と「ストーリー」な話で、下のセックスばっかりのとこが「プロット」なんですよ。で前半はそのプロットがシンプルな情報しか伝達していない、だから明示的なストーリー(男最低!とかこの時代大変)を掴んでいくんですが、後半になってから少しセリフが刺さるような鋭利なものになっていき、情報を沢山含んだプロットになっていくんですね。そこから当時の情景や登場人物たちの心が滲んでくるって感じです。今日手に入れた知識なので拙いですが、丁度いい演習問題だったので書き残しておきます。こういうのをかけたときに映画見てよかった、ないしブログやってて良かったって思いますね。

今日はどっちもですよ。

好きなところ

はいここからは割と軽めなことを書いて、まとめにガッツリ書きたいこと書こうと思います。

やはりあのクレイジーな感じでしょうね。男尊女卑なんてもんじゃないです。男神女糞ですね。もうほんとにもののように扱います。海に遊びに来て突然真っ昼間港エッチをしようとする。女の子が断ると海に突き落とし、「おとなしくするなら、助けてやる」とか言うんですよ。極悪非道すぎる。女の子は「私泳げないのよ。助けて」(ガッツリ平泳ぎしてる)とか言ってんのに壁とかを掴んでる手を蹴ったりします。ガチエグ。そして根負けした女は引っ張り上げられまんまとやられちゃうんですねえ。基本こんなことばっかりしている映画です。徐々になんかにじみ出てきますが。

好きなセリフは

「男への興味、セックスに対する好奇心」

です。マジで笑いました。これ主人公が2回くらい言うんですよ。気に入ってんのか?って。エネルギーを持て余して徘徊するヒロインに投げかける言葉なんです。それを満たしてあげるよって。

これはカサブランカの「君の瞳に乾杯」に次ぐ超名台詞ですね。笑えますとにかく。

まとめ

なんかいろいろブレブレな記録になってますが。この映画2020年リメイクしても良い、っていうか全然このまま普通に上映しても全然今のラインナップと戦える映画ですよね。セリフとか演技とかで拒否反応が出る人も絶対にいるのはヒミツですが。

今の時代と共通する点もたくさんあるんですよね。この60年代までの「歪み」が主人公たちの「歪み」につながっていて、多分それはこの60年後の今でも歪み続けているんですよ。そのつながりが怖いです。なんか切っ先を感じますよね。

日本人ってなーんも変わってないのがわかります。最後の主人公のセリフに「男も女もないよ、俺達は自分をモノや道具にしないと生きていけないんだ。社会がそうなってんだ」ってのがありました。主人公たちも美人局形式で金を稼いでいたし、その少し上の世代は女達を人身売買まがいなことをしたりしてました。そういうのに従うしか無いし、憤って、情けなくて発したセリフなんじゃないかと思います。

書かなくても分かるように、何一つ変わってないと思います。それがポジティブな自分の道具化だとしても。そして主人公たちの姉の世代は世界を変えようと「青春」を捨てた世代だと劇中で語られている、そこで歪んだ「青春」が歪んだものを作り出しているっていうなんとも皮肉な話です。そしてそれがこの現代までもずーーーっと続いているというわけ。刺さるでしょうよこれは。とにかく演技とか展開はおいといておもしろい映画です。絶対に自分では選ばない作品なので良かったです。書きたいことはまだまだありますが、これもきっと複数回見るやーつですね。