ヒモ夫の日常

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大学生と名画その6「アラビアのロレンス」(1962年)

アラビアのロレンス」(1962年)

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見終わって呆然としてる

こんにちは。6本目にして若干心が折れかけている俺です。

今日の名画は「アラビアのロレンス」。これは史実に基づいたやつなんですかね。一人の希有な才能を持った男の話し。国家予算並みの金をかけて作ったのではないかと思うような、ハチャメチャな映像の連続、4時間弱の大長編、そして何より中身です。

呆然としています。最近、流行した映画「パラサイト」と賞を競った「レ・ミゼラブル」を見て似たような感覚に陥った(友人は"くらった"と表していました)のですが、それより濃厚にくらった、いやくらっています。くらingです。

ではあらすじ

リストによると

ジャンル:しみじみ(どこがじゃ

監督:デビット・リーン

主演:P・オトゥール/H・フォード(ハリソン・フォードいた!?

コメント:すべてが、大きい!!黒澤明は言った、「砂漠の一日のロケ代で僕の映画が一本取れるヨ」。デビット・リーン監督ってどんな人?(カンカンリストより)

はい。ふざけています。しみじみとしていて、内容も別になんともないのかな、ってこれで思ってしまいました。四時間も何を見させられるんだろうって。文句を言ってやりたいです。あとハリソン・フォードはどこにいた?あのカメラマンかな。じゃあU-NEXTお願い。

T・E・ロレンスの自伝をデビット・リーン監督が映像化した一大戦争スペクタクル

実在のイギリス陸軍将校が率いたアラブ独立戦争を描いたアカデミー賞全7部門受賞作品。広大な砂漠で繰り広げられる大規模で壮絶な戦闘シーンに圧倒される。

1916年。イギリス陸軍少尉・ロレンスは、オスマン帝国からの独立を目指すアラブ民族の情勢を確かめるため現地へ向かう。反乱軍の現状を目の当たりにした彼は、アラブの種族をまとめ上げゲリラ戦を展開。拠点をめぐる激戦に勝利するまでになるが...。 (U-NEXTより)

 あーーーーーーはいはい。どうりで。どうりでこんなにくらうわけね。

はあ。ここの欄って何書いてましたっけ。それも忘れました。鏡を見たら、顔が丸くなってて、ホント自粛太りって嫌ですよね。

とかそういう話がしたいわけじゃないんですよね。宇多丸さんが言っていたんですけど、映画は疑似体験ができるらしいです。自分ができないこと、知らないことを疑似体験することができるっていう側面もある、と。

これは疑似体験してよかったんでしょうか。なんか複雑な気持ちです。

主人公のロレンスが、戦闘やアラブの民族たちとの交わりとか国、とか軍とか、そして砂漠と交わって、変化していく話です。人じゃなくなる、とか狂う、とか色々表現を考えたんですがどれもしっくり来なかったので、見た人いれば教えて下さい。

もう何周した精神状態なん?って感じ。呆れて笑うほどでした。

割と物語の要素的には、「地獄の黙示録」とかさっき上げた「レ・ミゼラブル」とか類似した作品はあると思います。新鮮さもあまり感じなかったので。でもくらってるんですよね。

多分この先なにかの転機かわかりませんが、どこかでもう一度見ることになると思います。

好きなところ

特にないです。というかあったんですが、どうでも良くなりました。序盤に部下を助けて、砂漠で水を飲むシーンがあるんですが、あれはこれまで見た映画の中で一番うまそうに水を飲むシーンだとは思いました。

 

とは言え印象に残っているシーンはいくつかあって、これは記述しておきたい。

アメリカの記者の質問「砂漠のどこに惹かれるのか?」に対してのロレンスの回答

この質問に対し「清潔さ」と答えます。いや正反対やん。とも思いますが、たしかにあの一面の砂の外面は美しいですし、あの場所では皆平等に苦しい。

そして後の部族の長のセリフで「砂漠には誰(なにも?死体も?)も残らない」的なセリフがあるんですね。それでなるほどなと思いました。

もちろん物理的な死体やものもそうですが、そこでの思想だったり感情だったり、起きた事実や、やってしまったことも、なんか全て砂漠は飲み込んで、無にしてしまうように思います。とても静かに。綺麗だとも取れますね。

夜は涼しいし、月も星もよく見えて安全よ❤みたいな野暮い事は言わないでね、あくまで映画の中での印象の話ですから。イスラム教とも密接に関係してる部分でもあるので、とりあえず「イスラム教 砂漠 意味」で検索して勉強します。

②トルコ軍の列車を爆破し、その生き残りから銃で狙われるロレンスのシーン

まあそのまんまで、列車を爆破し、その中のものを強奪していくんですが、ロレンスはアラブから言わせれば、英雄なんです。それで脱線して横たわった列車の上に登り、歓声を浴びますが、生き残りの兵士(下半身は使い物にならないほど重症)に肩を撃ち抜かれ落下してしまいます。そしてその撃った兵士と、見つめ合い好き放題撃たせます。もちろん相手は瀕死なので銃弾は初段以外当たりませんが、完全に棒立ちです。顔は全くの無表情。

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こうです。

ロレンスはきっと自分の変化を感じ始めていたはずです。人を殺すことができるようになっている自分が止まるならここだと、感じたんでしょうか。だから反撃も身を隠すこともしなかったのだと思います。つくずくアッラーに愛されています。

トルコのゲイ将校のおかげでもう一度チャンスは訪れるんですが。
③ロレンスの笑うシーン達

彼結構笑うんです。へんなとこで。

まず最初は、重要な拠点を占拠しに行くシーン。アラブの部族たちを率いてラクダで行進するんですが、少し微笑みます。戦いに行く自分に興奮しているような笑みです。

そして、次。上記の銃撃の後、トルコ軍に拷問をされ、自らがアラブ人ではない、ただの平凡でなにもできない白人なのだ。と悟り、自軍の拠点へ戻り、転属届けを出します。

ですが大戦果を上げた兵士なので、昇進したり、上の人との繋がりも強くなり、駐在している兵士たちにも褒め称えられます、そしてロレンスの才能が再び現れるんですね。次々に作戦プランをたて、上司たちに説明をしていきます。そこで「現地にもどるか?」と尋ねられ、満面の笑みでYESと言うんです。

自分を止められなくなってしまいました。細かな表情ですが印象的でした。

あと、トルコ軍の敗走兵を皆殺しにするシーン。敗走兵をみつけ、部下たちに迂回を提案されます。そうするとその敗走兵たちが戦っていた村出身のアラブが突撃。無残に撃ち殺されます。それがトリガーとなり、ロレンスは皆殺しを決行。みなラクダや馬で突撃します。その時も、これまた満面の笑み。好きなことをしている時の笑顔です。アメトーークにもでれそうな笑顔です。

最後は、自身の失敗によるトルコ軍負傷兵が無残な状況になってしまったシーン。

最終目的地であった、「ダマスカス」を占領、そこに「アラブ国民会議」と称し、共同体を作ります。ですが議論は成立しません。それもそのはず、部族間の争いはいつまでも絶えないし、まず読み書きすらまともにデキる人は少数しかいない。そんな中、部族たち次々には砂漠に帰ります。彼らにとって住みやすく、清潔である場所だからです。

それで共同体の生活水準が保たれず、捕虜を収容する軍の病院が破綻します。病床600に対し、2000もの負傷者、水も電気も食料もない。みな灼熱の中東で腐っていくしかないのです。そこで見かねてやってきたイギリスの軍医にロレンスはぶん殴られます。「この汚いアラブが!!」みたいなことを言われながらです。そこで死体の山に倒れ込み笑うのです。

この笑いは上記の3つの笑いとは違うものでした。何者でもない自分に呆れたのだと思います。

このような惨状は、軍でも部族でも見たことがないからです。

まとめ

とてつもなく長い文章になってしまいました。最初はもう二度と映画を見たくないとさえ思ったし、ブログに書くこともないなと思っていましたが、すっげえ出てきました。

これだから映画はやめられないですね。国とか民族とか、敵とか、お金とか、人間とか、一体何なんでしょうか。なんか全部どうでも良くなる映画だと思いましたが、そうでもないみたいです。

思い出せば思い出すほど、魅力的な映画でした。たぶん序文と全く違う熱量で書いているので、人の心情のフローがよく分かる文章なのではないでしょうか。

スティーブン・スピルバーグ監督が、映画監督になるきっかけになった映画だそうです。なんかわかる気がします。すべての物事を考えるにあたって、フラットになったような感覚がありますね。うまいこと言うつもりはないですが砂漠の清潔さのような気持ちです。

これからもより印象深くなる、自分にとって重要な作品だと思います。出会えてよかったです。感謝です。

映画は楽しいのが一番ですが。。。